漢方治療エビデンスレポート
日本東洋医学会EBM委員会エビデンスレポート/診療ガイドライン タスクフォース
19.
損傷、中毒、術後の疼痛
文献
渡邊義輝, 浅井真太郎, 飛田晶, ほか. 外傷および術後のケロイド・肥厚性瘢痕に対する
柴苓湯の有用性について. 医学 と薬 学 2012; 67: 245-9. 医中誌 Web ID: 2012164450 MOL, MOL-Lib
1. 目的
外傷、熱傷、術後のケロイド・肥厚性瘢痕に対する柴苓湯の有効性と安全性の評価
2. 研究デザイン
準ランダム化比較試験 (quasi-RCT)
3. セッティング
社会保険中京病院形成外科 1施設
4. 参加者
外傷や熱傷および術後のケロイド・肥厚性瘢痕部に瘙痒、圧痛、自発痛、潮紅、硬結、
腫脹などの自他覚症状が認められた症例 50 名
5. 介入
割付けは、来院順の交互法
Arm 1: クラシエ柴苓湯エキス細粒8.1 g/日 分3食前に12週間以上経口投与 29名 Arm 2: 非投与 21名
両群ともトラニラストなどの内服薬は投与せず、圧迫や外用剤・貼付剤などによる治
療は症状に応じて施行した。また、ステロイド含有軟膏を全例に適宜塗布した。ケロ イド・肥厚性瘢痕が四肢関節部に及ぶ症例では圧迫装具を使用した。
6. 主なアウトカム評価項目
対象部位の瘢痕部の高さと自他覚症状 (瘙痒、圧痛、自発痛、潮紅、硬結、腫脹) を 4
段階 (3: 高度、2: 中等度、1: 軽度、0: 症状なし) で調査開始時・2週目・4週目・8週目・
12週目に計測・評価した。
7. 主な結果
調査期間中に抗アレルギー薬を投与された症例を除いた50名を解析対象とした。瘙痒
と潮紅において8週目以降でArm 1はArm 2に比較してスコアの有意な改善が認めら
れた (8週目P<0.05、12週目 P<0.01) 。瘢痕の高さ、圧痛、自発痛、硬結、腫脹におい
て12週目でArm 1はArm 2に比較してスコアの有意な改善が認められた (P<0.01) 。
8. 結論
外傷、熱傷、術後のケロイド・肥厚性瘢痕に対して柴苓湯は諸症状の改善に有効であ る。
9. 漢方的考察 なし
10. 論文中の安全性評価
柴苓湯による副作用は認められなかった。
11. Abstractorのコメント
外傷および術後のケロイド・肥厚性瘢痕に対する柴苓湯の有効性を検討した臨床研究
である。形成外科領域で受診者が多いにもかかわらず、有効な治療法が確立されてい ない病態に対して柴苓湯の効果の検討を試みた先進的な臨床研究である。一方、解析
対象者数は記載しているが、当初の参加者数の記載がない。著者らも抗アレルギー薬
投与者を除外したと記載していることから、当初の参加者数と脱落した原因の記載が
望まれる。併用治療に関しても、圧迫や外用剤・貼付剤などによる治療は症状に応じ て施行していることから、それらの実施症例数も記載されるとより本研究の詳細が理
解できたと思われる。また、患者背景の表で原因として柴苓湯投与群では外傷が11名
いるが非投与群では 1名しかいない。ケロイドに比べて肥厚性瘢痕は改善しやすいこ
とを考慮すると原疾患の偏りが結果に影響していないか考察することが望まれる。さ
らに、結果で「瘢痕の高さ」が1.5 mmから0.5-1.0 mmの改善と図示されているが、単
位がcmの誤りでないとすると非常に微細な変化であるので、計測方法などの記載が望
まれる。しかし、確立した治療法がない本病態に、これまでの報告をもとに臨床研究
を試み、柴苓湯に一定の効果を見いだした点は素晴らしく、今後さらに多施設での有 効性の評価が期待される。
12. Abstractor and date
後藤博三 2013.12.31